直撃!フロントランナー

同志社大学「同志社ミツバチラボ」のメンバー(当時)が、ミツバチプロジェクトのフロントランナーにインタビューしたものをまとめています。

TBSミツバチプロジェクト 活動の様子

TBSミツバチプロジェクト
高橋進さん

TBSミツバチプロジェクト 高橋進さん

第7回は、TBSミツバチプロジェクトを担当されている高橋進さんです。
TBSミツバチプロジェクトは、東京赤坂のTBS放送センターの低層階8階屋上で、2011年からスタート。 地域の学校の環境教育とはちみつによる話題提供を目的として活動しています。

スタートした経緯を教えていただけますか?

2010年名古屋でcop10生物多様性条約会議がありましたが、関心の無い人にも興味を持って貰うには、どうしたら良いのか考えていました。

それまでに2006年スタートの銀座の活動は耳にしていましたし、何よりパリのオペラ座の屋上に巣箱を置いてシャンゼリゼ通りのマロニエ並木などからハチミツが採れる事を知り、都会の中での養蜂に魅力を感じていました。

日本で初めて都市養蜂を始めた岩手の養蜂家の藤原氏は、大学の先輩で「東京に来ると盛岡よりも花が多く咲いている」と気付いた事から、都心のビル屋上でスタートさせたのは御本人から伺っていました。

日本養蜂協会の方々や玉川大学の先生方に相談しても、理由は一緒でした。

• 思っているよりも緑と花が多く

• 農薬を撒かない事

これなら赤坂のビル屋上でも可能かも知れないと準備を進めました。

主要な目的は何ですか?

都心で育つ若い世代への環境教育です。

メッセージはありますか?

ミツバチにとって農薬汚染が無く緑や花が豊かな都心は、人間にとっても安心安全な場所だということです。

どんなイベントがありますか?

地域の小中学校のミツバチ教室を年に4~5校で開催し、大人の体験教室を合わせて毎年17~18回のイベントを実施しています。環境団体や港区、環境省のイベントでもミツバチ教室を実施しました。コロナで、今年は標本箱を学校に持ち込んで教室を行いました。大変ではありましたが、子ども達が自分の目でスズメバチとミツバチの大きさの違いを確認したり、巣箱にミツバチ達がびっしり付いていることを見たりしました。今はいくらでもデータを検索することができますが、自分の目で見ることが大切ではないかと思っています。私が素手でミツバチを触ることもあります。そうすることで、安全な方法で触れば、ミツバチは襲ってこないことを子どもたりに伝えています。ある時、子ども達がその日に死にそうな蜂を見つけて、子ども達が騒いでいました。「どうして動かないの」「死んじゃうの」と大騒ぎでした。ペットは10年以上生きますが、ミツバチはせいぜい40~50日の命です。小さいけれども一生懸命生きている動物がどんな一生を過ごすのかを自分の目で見て知ることが面白いことではないかと思います。

初心者や社会に伝えたい都市養蜂の醍醐味を教えていただけますか?

赤坂の町会長から「赤坂の桜にはサクランボがなる様になったね」と言われましたが、ミツバチが飛ぶ事による変化に気づく住民が増えてきました。「コロナ禍で家庭園芸を始めてプランターにラベンダーを植えたらミツバチが来て可愛い」「青山墓地のお供えの花にミツバチが居た」などの目撃談が多く寄せられるようになりました。ちなみに10年間、ミツバチ教室の参加者で刺された人は一人もいません。虫と聞いただけで殺虫スプレーを手にするより、小さな生き物が僅か40~50日の寿命の中で、季節の花を求めて一生懸命生きている事を知るのは都会生活に潤いをもたらします。

今後の展望を教えていただけますか?

「ミツバチが居るまちからミツバチも居るまちづくり」への展開です。

参考にしたのがパリのオペラ座の屋上でミツバチを飼い、シャンゼリゼ通りのマロニエ並木からハチミツを採るという都会らしいお洒落さです。ところが、10年経ってパリではミツバチを飼うばかりではなく古いビルの屋上が次から次に都市農園になっている事を知りました。大規模な再開発ではなく、屋上がイチゴ園になっていて、いつの間にか先に進んでいました。屋上は日当たりが良く、作物が美味しくできるのは赤坂でも実証済みです。巣箱の周りのプランターに植えてあるハーブ類の「採れたての美味しさ」は絶品でした。プロジェクトの推進には「楽しさと美味しさ」が大切だと改めて思い、食の都に習った都市養蜂を、地域と協働して進めてみたいと思います。

TBSミツバチプロジェクト 活動の様子

ミツバチを飼うことで、赤坂の住民にも意識の変化を感じますか?

蜂蜜のテイスティングの際に「この蜜の花は何ですか?」と聞くようにしています。

例えば、赤坂は桜が多いため、桜のハチミツができます。大人はほとんど分からないが、子どもは「桜だ!」と分かったりします。「自分の周りの花から蜜ができる」ことが伝わると、驚きがあります。「来年は、身の回りの花を見てみる」という意見が出ることもあります。

TBSを隔てたところにお寺がありまして、そこにあったけやきの木が大雨で倒れてしまうことがありました。それで「何を植えよう?」となったときに、住民の人が「ミツバチが好きな花が咲く木を植えて欲しい」という意見が出たということを、後から聞いたこともあります。

コロナで変化を感じていることはありますか?

ミツバチみたいな小さいものでも、役割があったり、一生懸命生きていたりします。自分達の周りのひとつとして、ミツバチを感じられるような「ミツバチもいるまちづくり」を考えています。最近は、赤坂では絶えて久しいツバメが来るようになりました。ツバメにミツバチを食べられることは困ったことではありますが、これこそが生物多様性です。緑化計画が色々進んでいますが、単に緑を増やすことではなく、そこに生き物が育つようなことをやっていきたいと思います。今年はコロナで、ベランダ園芸、自分で野菜を育てる人が増えました。屋上農園ではないが、目の前で育ったものをそのまま食べるとそれがどれだけ美味しいかが分かります。

そういうことも含めて考えたときに、「環境問題」という言葉を使うと専門家しか集まらず、きちんとしているんだけど広がらない印象があります。やっぱり興味のない人に興味を持ってもらうことが重要だと思います。ミツバチプロジェクトを進めてきたのはそういう考えもありました。

TBSミツバチプロジェクト 活動の様子