直撃!フロントランナー

同志社大学「同志社ミツバチラボ」のメンバー(当時)が、ミツバチプロジェクトのフロントランナーにインタビューしたものをまとめています。

NPO法人サッポロ・ミツバチ・プロジェクト活動の様子

NPO法人サッポロ・ミツバチ・プロジェクト
酒井秀治さん

NPO法人サッポロ・ミツバチ・プロジェクト 酒井秀治さん

第2回は、現在ミツバチプロジェクト・ジャパン理事で、NPO法人サッポロ・ミツバチ・プロジェクト理事長の酒井秀治さんです。
サッポロ・ミツバチ・プロジェクトは、2010 年発足。通称『さっぱち』。「都市で楽しむ・遊ぶ感覚」をベースに、多様な市民が自分事として関わり、つながりながらソーシャルキャピタルを育むまちづくりとしての養蜂活動を推進。札幌の土地ならではの自然・季節を味わえる蜂蜜を活かした商品開発や⾷育料理教室、ミツバチから環境共生の未来を学ぶワークショップなどに取り組んでいます。

立ち上げの経緯は?

建築やまちづくりを本業としています。札幌都心の広場整備計画に関わった際、カラスが多い課題への対策を検討する中で、銀座ミツバチプロジェクト(銀ぱち)の田中さんの著書にカラス対策としてミツバチがいい、ということがあり、カラス対策が目的で2009年に田中さんに電話をしました。

その時、田中さんから「そんなネガティブな目的だけじゃなく、札幌は花がいっぱいあり良い蜜が採れるから地域再生として養蜂をやったら?」と言われました。確かに地域を楽しみながら魅力を発見できる活動ではないか?と思い改め2010年から有志を募りサッポロ・ミツバチ・プロジェクト(さっぱち)をスタートしました。

集まる人達は、環境への意識が高いなど特徴はありますか?

どちらかというと、純粋にミツバチに触れてみたい、という感覚で来る人が多いと思います。

1つのことをするときに小学生から高齢者まで多世代の人が集まって、一緒に仕事をする活動である点も面白いと思います。おばちゃんたちが子どもにちゃんと注意する、高齢の先輩方にぼくらが叱られるという、今ではあまり見かけなくなった関係性も生まれ、そういう機会は大切ではないかと考えています。

メッセージ、ビジョン、キーワードがあれば教えていただけますでしょうか?

NPO法人サッポロ・ミツバチ・プロジェクト

シンプルな3つのキーワードを柱に活動しています。

「「Green」
みつばち空のみちづくり」というキャッチコピーのもと、建物の屋上スペースを有効活用し、小さな緑をネットワークさせる活動を推進しています。現状は2つのビルで実施しています。その内の1つでは銀ぱちさんの芋人プロジェクトに関わるかたちでサツマイモづくりも始めています。

「Brand」
「札幌の季節を味わう」をコンセプトに、採取蜜ごとに瓶詰めした蜂蜜を販売しています。様々な企業・店舗と連携してさっぱち蜂蜜を使った商品を提供しています。

「Community」
特に子ども達は毎年屋上に来るのを楽しみにしてくれています。環境教育をしている団体と連携したワークショップもありました。色々なイベントをしていますが、やはりベースはいつも養蜂作業に来てくれるサポートスタッフ(登録数20名以上)のお陰で成り立っています。そこを大事にしています。誰もが、気軽に来て、関わりの度合いはそれぞれの要望に合わせて参加できるようにしたいと思っています。

そのようなグループを続ける工夫は?

NPO法人サッポロ・ミツバチ・プロジェクト活動の様子

市民のコミュニティベースでやることには苦労も多いです。多世代で多様であるし、養蜂では「これが正解」の方法がなく、皆それぞれが好きだからこそ養蜂作業の方法を各自で調べてきます。しかし、それが少しずつ違ったりします。気持ちを汲みながら、マネジメントする意識で行っていますが、ぶつかり合いはたくさんあります。だから、「もしかしたら、そういう考え方もあるかもしれないから、まずはやってみよう」という空気を創るようにしています。

それが、酒井さんのリーダーシップですね?

そういう考えを、皆理解してくれているのじゃないかと思っています。皆、考え方や関わりが違う中で、互いを認め合いながら同じ方向を向いてもらうことが役割と思っています。

同じ方向とは?

NPO法人サッポロ・ミツバチ・プロジェクト活動の様子

2つあります。

1つは、ミツバチが一番大事ということ。ミツバチファースト。ミツバチがいなければ活動はありません。お世話をする時も、いかにミツバチ目線で考えられるか、ということを大切にしています。そもそも養蜂歴60年のおじいさんとの出会いがあり、その後、その方が師匠となり、札幌の活動は実質スタートしました。師匠に最初に言われたことが「ミツバチを一番に考えなきゃいけない。ミツバチがストレスを感じることがないように」ということでした。それだけは、しっかり引き継いでいきたいと考えています。それはさっぱちの方向を決めるものでもあります。

もう1つは、ただの養蜂家ではないという点です。まちづくりとして養蜂をしているということです。多様な人とコミュニティを創りながら、ミツバチを中心に様々な活動を生み出していくことに価値があるから、ただ養蜂作業をするだけじゃないと、伝えています。

まちづくりにおいて、ミツバチはどのような位置づけですか?大切な存在ですか?

考え方や関わりが違う中で、互いを認め合いながら同じ方向を向いてもらうことが役割と思っています。色々なまちづくりがありますが、環境指標生物であるミツバチを中心に据えるとまちの蜜源、身の周りの小さな自然に目を向けるようになります。そういった点で緑のまちのための活動でもあります。あるいは“賑わいを創る”という点では、このまちでしか採れないハチミツを様々なお店で使ってもらい収益性が挙がることで、経済が潤い、まちの活性化の一助になると思います。

今後の展望への想いを教えて下さい。

蜂蜜の販売だけでは、デザイン性を上げたりしても活動資金をつくるのに限度があります。これからはハチミツだけに頼らず、子どもたちの環境教育プログラム、さっぱち蜂場のフランチャイズ化、研究機関と連携、カフェの運営など多面的に考えていかなければならないと思います。これからの10年の夢をみんなで描いているところです。

その他何かあれば教えていただけますか?

さっぱちに関わる人が「札幌ってこんなに豊かなまちなんだよ」と胸を張って言えるような活動にしたいです。ただ、どのようにして収益性のあるソーシャルビジネスにしてゆくのか?が課題です。様々な人と繋がって、メンバーそれぞれの個性や得意技を活かしながら新たなことを生み出していきたいと思います。