直撃!フロントランナー
同志社大学「同志社ミツバチラボ」のメンバー(当時)が、ミツバチプロジェクトのフロントランナーにインタビューしたものをまとめています。
梅田ミツバチプロジェクト
小丸和弘さん
第 1 回は、現在ミツバチプロジェクト・ジャパン理事長で、梅田ミツバチプロジェクト理事
長の小丸和弘さんです。
梅田ミツバチプロジェクトは、2009 年 9 月発足、大阪・梅田での
養蜂活動を通じて、大阪都市部における生態系の循環を考え、地域と一体の持続可能な都市
自然環境を作り、美味しく、美しい社会環境作りを目指して活動しています。
10年以上ミツバチプロジェクトをされてきて、得られたものは何ですか?
実は、自分たちの感覚としては大きな事はしていないと思っています。プロジェクト自体も大きく広がっている自覚はありません。ただ、今振り返って考えますと継続できていることが一番大事ではないかと思います。みんな仕事がある中で、毎週休まずミツバチのお世話を続けられたことは、私達にとって大きな自信になっています。もちろん、賛同下さる方々の協力があって継続出来た事は間違いありません。
そこから非常にたくさんの事を学べた事が財産です。
ミツバチのお世話は何が大変ですか?
生き物と向き合うという事は「待った」が効かないです。必ず直ぐに様子を見ておかないといけないということが沢山あって、そんな時に誰が都合をつけられるかが一番大きな課題でした。みんな専業でミツバチの世話をしている訳ではないので、その時間をいかに作れるかが一番苦労しました。そこを何とか出来るかどうかで10年続けられるか、1年で終わってしまうかが違ってくるような気がします。
続けることってエネルギーが必要になりますよね?
いろんな企業や団体が養蜂を始めたいと相談に来られますが、ほとんどが1年くらいでなくなることが多いです。何が難しいのかを考えると、やっぱりみなさん時間が作れないようです。技術的なことよりも時間を生み出すことが難しいと思います。これから始められる方にも、その覚悟は必要だと思います。
今のコロナ禍に必要な新しいライフスタイルをされてきた印象を感じますが?
ミツバチプロジェクトは社会活動として始めましたので、収入を得る発想はありませんでした。ただ、本業に関して、何か同じことの繰り返しというのか、物足りなさを感じていたのかも知れません。新しいことにチャレンジしないとダメという気持ちはありました。新しい事へのチャレンジには魅力を感じていましたが、ミツバチと関わる事になって、自分の生き方が変わるほどにライフスタイルは変わりました。
今のコロナ禍にあって、それは更に強く思うようになりました。
周りの人もそれは感じていたのでしょうか?
例えば、食育、環境教育、屋上緑化、壁面緑化とは言いますが、やっぱり大阪ってところは「それって儲かるの?」「美味しいの?」って返しになります。だから強いブランドを創らないとプロジェクトの継続は難しいって考えになりました。だったら自分たちで全て創った方が面白いね!となりまして、デザインやグラフィック、ロゴ、パッケージ、器などのコーディネートから、お店のインテリアやテーマ、カラー、売り方、アイテム、商材の価格設定など全て仲間で作り上げていきました。
これも新しい事へのチャレンジですね。
すごいですね。なかなか自分たちでそれをやるのは大変じゃないですか?
自身もデザインの仕事をしていて、ブランディングの仕事をしている仲間がいたことは大きいです。ただ、食物販のブランディングはほとんど経験がなかったので、特にお菓子はどうしたら良いのだろうか?とみんなで考えました。そこで、別会社の「株式会社大阪ハニー」を立ち上げて、梅田ミツバチプロジェクトで採れたハチミツを全部買い取って販売することにしました。時々、NPOのボランティアが足りない時は、大阪ハニーの社員さんに手伝ってもらうこともあります。
本業とミツバチが上手く助け合っている感じということでしょうか?
そうですね。店づくりなどもみなさん気軽に手伝ってくれるので、本業の仲間にはすごく助けてもらって、恵まれていると思います。銀座ミツバチの田中さんにもブランドを創った時に見てもらいましたが、その時「いくらかかったの」と驚かれて、「実は自分たちで創ったんです」と言ったら「すごいね!僕たちもやりたいんだよね」と言っていただいたことは嬉しかったですし、今ではそこが自分たちの誇りです。
大阪で都市養蜂が成り立った秘訣を教えていただけますか?
10年前始めた時は、展示即売していても「500円です」と言うと「あんたらすごい商売してるな。そこのスーパー行ったらこんな大きなボトルでも800円で売ってるで!」みたいなことをほぼ100%言われていました。でも続けていくうちに随分変わってきました。今ではトレーサビリティーのしっかりしたハチミツを求めてわざわざ来られるお客様もいらっしゃいますし、我々のハチミツを「安い」と言う方も増えてきました。やはり、伝え続ける事って大事だなと思いました。そうしてハチミツを見定める人が増えていって、大事に物作りをしている人がフューチャーされて、世の中が変わっていくと良いですね。
大阪でされている良さや全国に発信できるビジョンなどあれば教えていただけますか?
強みであるブランディングで収支を成り立たせて人を雇用するという循環を作りたいです。且つ、社会活動をNPOとしてやりたいことができるのが理想です。どうしても補助金に頼りがちですが、自分達で収支がまかなえて、かつ社会活動が持続できるモデルを作りたいです。そうして継続していくと、もっと面白いことができるでしょうし、行政や企業ともどんどん連携ができると思います。その為にも続けることが一番大事だと考えています。そして、安全で高品質な生産物を作れるプレイヤーでもあり続けたいです。
大阪では面白い事がローカルなのにできている、と思ってもらえるような活動でありたいです。
最後に、初心者の方や社会に向けて都市養蜂の醍醐味をお聞きしてもいいですか?
全くの初心者だけで都市部で養蜂を行うというのは実際には難しいところもありますが、少ない群数であれば畳3畳ほどのスペースでも行う事が可能なので、屋上などのちょっとした遊休スペースの活用としても魅力があります。ミツバチが生息する事で周辺の植物が元気になり、野鳥も都会に戻ってきます。周囲の菜園などもミツバチの受粉により実り豊かなものになるでしょう。また養蜂にはハチミツを収穫するという事以上に数多くの方とのつながりや広がりという楽しみがあると思います。
特に都市養蜂ではその要素は大きく感じます。
ただ、そんな難しいことはさておき、都会の街中に樹々や草花が沢山あり、ミツバチが普通に気持ちよさそうに飛んでいる。そんな景色が見たいというだけでも充分な魅力ではないかと思います。
都市に限らず、日本にも養蜂の裾野が広がっていけば嬉しいですね。