直撃!フロントランナー
同志社大学「同志社ミツバチラボ」のメンバー(当時)が、ミツバチプロジェクトのフロントランナーにインタビューしたものをまとめています。
山田緑地みつばちプロジェクト
舛本哲也さん
第12回は、山田緑地みつばちプロジェクトの舛本哲也さんです。
山田緑地は福岡県北九州市小倉北区の南西部に位置する、およそ140㏊の広域公園。北九州市は、都心部から程近くに残されてきた貴重なエリアとして、自然環境を守りながら市民の憩いの場として活用するため、芝生広場や自然観察路を整備して、1995年にオープン。「30世紀の森づくり」を目指していくとのことです。
山田緑地みつばちプロジェクトは、山田緑地指定管理の開始と同時に2011年にスタート。セイヨウミツバチの蜂蜜が多い中、採蜜量が少なく希少価値の高いニホンミツバチを飼育しています。
舛本さんが養蜂を始められたきっかけは何でしょうか?
10年程前にJR小倉駅前の商業施設で「小倉みつばちプロジェクト」の世話人を始めたのがきっかけです。山田緑地ではイベントのプロデュースをやっていて、その中で担当しているのが山田緑地みつばちプロジェクトです。
山田緑地はミツバチプロジェクトを意識した設計でしょうか?
山田緑地の設計には、30年前に携わりました。当時からニホンミツバチが敷地内に住んでいることは知っていましたが、特にミツバチだけを意識した設計にはなっていません。山田緑地は140 ヘクタールという広大な緑地です。それを3つに分けて、「利用区域」「保全区域」「保護区域」があります。山田緑地は、「30世紀の森づくり」として緑を守る、生き物を守るというのがコンセプトなのであまりハードな整備はしてないですね。ミツバチにとってはとても良い環境だと思います。
昔から緑を守られていたということでしょうか?
昭和の初め頃の里山の時代、生物多様性に富んだ場所として畑や田んぼがあり、樹木を多少切る林業もされ、ミツバチも飼育していたと聞いています。25年くらい前にはホタルもたくさんいました。大木にホタルがたくさんついて、光ったり消えたりクリスマスツリーみたいだったようです。
どのように自然を保護されてきましたか?
25年前の開園当時からは環境を壊すなということであまり木を切らなかったようです。そうするとホタルがものすごく減りました。現在では川の周りの木を切って、光を取り入れることによって、藻類が育ち、その藻類を食べるカワニナが生息し始め、ホタルが増えてきました。生き物は真っ暗な中では生息できないですね。そういった自然の循環を大切にしています。ミツバチも真っ暗なところは適してないです。営巣場所は、明るくて、ちょっと小高く、シンボル的な石だとか木があって、背後に樹林があるというような環境がミツバチにとって適していると思います。環境の保全といっても、少しは木も切りながら、それが人間の営みと繋がることが大事です。山田緑地も昔は小規模な林業をやっていました。木材を馬車でまちに売りに行っていたようです。人の生活と生き物の環境がうまく調和し循環していかないとニホンミツバチなどの生き物にとっても良くないのかなと思っています。生き物調査を行いながらいろんな生き物が生息できる豊かな環境づくりを目指しています。
養蜂の楽しさはどういったところでしょうか?
ニホンミツバチの飼育はお金も比較的かからず一人二人でもできます。山田緑地では自然と向き合いながら広い場所でやるので気持ちよく作業でき、参加者の生きがいづくりにもなっています。コロナ禍では、レクリエーションのひとつとして楽しんでいることもあります。高齢の方も参加してくれて、仲間意識ができ、友達が増えることはいいですね。
農福連携もされていますね?
昭和の初め頃の里山の時代、生物多様性に富んだ場所として畑や田んぼがあり、樹木を多少切る林業もされ、ミツバチも飼育していたと聞いています。25年くらい前にはホタルもたくさんいました。大木にホタルがたくさんついて、光ったり消えたりクリスマスツリーみたいだったようです。NPO法人グリーンワークで最初にやり始めたのが福祉活動の園芸療法です。植物に触れることによって元気になってもらおうと、知的障がい者施設の利用者や高齢者施設の認知症の方々に楽しんでいただきました。参加の皆さんを見ると効果があったかなと思っています。養蜂でも同じような取り組みができると思います。生きがいづくりや就労支援、レクリエーションとしての養蜂です。まずは職員の方たちに養蜂のことを理解していただいて、養蜂の仕組みだけではなく、障害者支援としての視点で理解していただくことが大切だと考えています。昭和の初め頃の里山の時代、生物多様性に富んだ場所として畑や田んぼがあり、樹木を多少切る林業もされ、ミツバチも飼育していたと聞いています。25年くらい前にはホタルもたくさんいました。大木にホタルがたくさんついて、光ったり消えたりクリスマスツリーみたいだったようです。
セイヨウミツバチとニホンミツバチでは違いますか?
ニホンミツバチはセイヨウミツバチと比べると管理の頻度が少なくて済むので、農福連携も行いやすいという気がしています。自然豊かな場所で育った大人の方達だと特に受け入れやすいと思ったりします。ニホンミツバチを飼育している人たちはみんな言いますね「すごく可愛いです」と。特にニホンミツバチはあまり攻撃してこないでしょ。夏場のセイヨウミツバチは結構攻撃的です。ニホンミツバチはどちらかと言うと冬場の方が荒々しいです。ニホンミツバチは冬でも花粉や蜜を取りに行きます。枇杷の花や椿、山茶花など。冬は蜜源植物が少ないですから気が立っているのかもしれませんね。
九州みつばち工房はどのような活動をされていますか?
ミツバチプロジェクトの参加者の方々がずいぶん増えてきましたので、2020年の2月から九州みつばち工房という蜂蜜の販売やミツバチ愛好家たちが気軽の参加できるサロンを北九州市小倉区につくりました。
北九州は養蜂が盛んですね?
北九州は緑豊かな自然が残っているところが多いです。緑が多く、宅地が密集している所はありますが、そんな中でも飼っておられる方がたくさんいらっしゃいます。
初心者の方や社会に向けて、都市養蜂の醍醐味を伝えるとしたら何ですか?
環境的な視点から言いますと、ポリネーターとしての「森をつくる・植物を作っていく役割のミツバチ」を大切に育てることが、私たち都心に住んでいる者の役割でもあると思います。そういう意識を持っている人たちを増やして、我々が伝えていくことが大切かなと考えています。
その思いは社会に伝わっていると感じていらっしゃいますか?
参加者の中には、菜の花を植えたり、蕎麦を植えたり、緑を増やしていこうと蜜源植物を植え始めておられる方が増えてきました。農薬を利用しないようにしたいと常々おっしゃっている方もおられます。子ども達には、「子どものみつばち博士講座」を年に1、2回やっています。受講後に、社会性昆虫・身近な生き物・飼育の面白さ等を上手に論文として作り、他事業で表彰されたりもしています。子ども達にも環境教育的な視点で広がっていると思っています。一番感じているのは、ミツバチを通じて参加者のコミュニケーションが活発になり、環境への意識が強くなってきていることです。