直撃!フロントランナー

同志社大学「同志社ミツバチラボ」のメンバー(当時)が、ミツバチプロジェクトのフロントランナーにインタビューしたものをまとめています。

名古屋マルハチプロジェクト 活動の様子

名古屋マルハチプロジェクト
松良宗夫さん

名古屋マルハチプロジェクト 松良宗夫さん

第4回は、現在ミツバチプロジェクト・ジャパンの監事で、NPO 法人マルハチ・プロジェクト理事長の松良宗夫さんです。
NPO 法人マルハチ・プロジェクトは、2010 年に COP10(生物多様性条約第 10 回締約国会議)が名古屋で開催されたことを契機に活動をスタート。「ミツバチから考える環境づくり」をテーマに、名古屋市内のビルの屋上にて養蜂活動を展開し、ミツバチとのふれあいを通じた環境保全に取り組んでいます。

みつばちプロジェクトを始められたきっかけは何ですか?

三晃社(戦前からある老舗広告代理店)に勤めていた時にビルの屋上で養蜂を始めました。2010年に名古屋でCOP10(生物多様性条約締約国会議)が開かれたことを契機に、会社としても新しい取り組みとして環境や生物のことを考えようと始めたわけです。

松良さんが環境に興味を持たれていたきっかけは何ですか?

広告業界はプロダクトとしても環境に何らかの負荷を与えていると考えていました。ISO14000に取り組んだりもしていましたが、もっと積極的なことができないかと思っていました。

名古屋は養蜂が盛んなようですが、松良さんはどのように養蜂を学ばれましたか?

昭和60年には既に国際養蜂家会議が名古屋でありまして、その何周年記念で岩手の藤原先生が名古屋に来られていました。先生にお尋ねしたり、自分でも調べたり、名古屋市の養蜂組合の事務局長をされていた安藤さんにも指導していただきました。安藤さんは昭和60年の国際会議にも参加されていて、名古屋の歴史ある養蜂に自負されていました。私も調べましたが、名古屋や岐阜は近代養蜂の発祥の地だと書かれているものもありますね。

興味深いですね。巣箱はいまどのくらい置かれていますか?

2010年も2箱から始めました。今は毎年多い時で5箱になりますが、越冬すると春には2箱になっています。

冬の寒さの苦労を教えていただけますか?

どちらかというとセイヨウミツバチは冬が厳しいですね。暑さには少々のことでは参らないです。土の上においてあると少しはいいんでしょうけど、コンクリートだとかなり冷えますね。うちのビルは周りのビルに比べて少しだけ低いです。風はよけてくれるんですが、春の日差しが届かなくてなかなか暖かくならないですね。ビルの上は自然ではないので苦労しますが、害虫はスズメバチくらいで、蚊が少ない事や蜘蛛の巣、蛙、蟻もいないことは人間が作業する点では助かっていますね。

名古屋の他のグループとの協力もされていますか?

名古屋マルハチプロジェクト 活動の様子

長者町さんは近いので内検を一緒にすることもできます。柳原商店街も近く、足りなくなったものを借りることもできます。名古屋の各ミツバチプロジェクトを調べてみますと興味深いです。名古屋城や熱田神宮は少し小高いところにあり、水害を受けない安全なところに造ったんだと思います。この南北に繋がる小高いところに、名古屋の全プロジェクトがあるんです。マルハチも柳原も名古屋学院大学も愛知商業高校や笠寺観音もこのライン上に全部あるのは偶然とはいえ、新しい文化を発信するには何か適しているようで興味深く思います。

松良さんがこれまで長く養蜂を続けられた要因は何ですか?

自分でもよく続いたなと思います。COP10の時はたしかに会社としても積極的でした。でも私がそれを収入に繋げるように展開できなかったことは会社にとって力を入れにくくなっていきましたね。それでも続けてこれたのは、やっぱり環境に対しての意識が強くて、思い返せば小学校の頃からプラスチックはだめだなと思うようなガキだったんです。生き物、特に昆虫と植物が好きで、私が入るべき会社は広告会社じゃなかったのかな、なんて思ったりします。子どもの頃に読んだ少年誌のなかの「未来の世界」なんかには、炭酸ガスが増えて地球が暖かくなって緑が減っていく・・・(なんて書いてあって)。ヤバいと思っていました。

年代で言うといつ頃ですか?

子どもの頃は、ちょうど公害の時期に多感な時期を過ごしました。中学校の頃は、堀川というドブ川の橋の上を歩くときは口を抑えながら渡っていました。その時の中学の先生がグッピーを飼って浄化の研究されていたことも環境に興味をもった理由ですね。

名古屋が環境に熱心なのはなぜですか?

COP10 があったことは大きいですね。愛知県庁も鹿島さんも名古屋でミツバチを飼うって言ってましたので、機運も盛り上がっていきました。藤前干潟はラムサール条約でも登録されている湿地です。条約前に不燃ごみの埋め立て地にしようと名古屋市が言い出した時があるんです。「冗談じゃない。あそこは生物多様性が豊富で、生物のおかげで浄化できているんだ。埋め立てちゃいけない」と猛反対が名古屋で起きました。その結果、名古屋は方向転換しましたね。その頃から環境に配慮するまちになりました。分別ゴミも大都会の割には昔から細かく分けていました。埋め立てできなくなったわけで、ゴミを減らすことに熱心になりました。プラスチックも鉄鋼炉の還元剤として投入する方向をとり、コークスを投入しなくても酸化鉄を還元して、ダイオキシンも発生せずに鉄を製造する方法を早くから積極的に取り組んでいます。名古屋のミツバチプロジェクトはみんな環境のことは考えていて、よくしたいという思いでやっています。

最後に、養蜂初心者の方に伝えたいことをお聞きしてもいいですか?

養蜂はダニや害虫に苦労しますが、私としてはなるべく薬を使わない方法を考えていきたいですね。薬は使えば耐性ができるので、使わない安全な方法を一緒に考えたいです。今はインターネットですぐに調べることができ、海外とも繋がることができるので熱心な方が出てきてほしいです。生き物にやさしく接するということも基本で、頻繁に様子を見てほしいと思います。