直撃!フロントランナー

同志社大学「同志社ミツバチラボ」のメンバー(当時)が、ミツバチプロジェクトのフロントランナーにインタビューしたものをまとめています。

かしまミツバチプロジェクト 中川憲一さん

かしまミツバチプロジェクト
中川憲一さん

かしまミツバチプロジェクト 中川憲一さん

第9回は、かしまミツバチプロジェクトの中川憲一さんです。
かしまミツバチプロジェクトは、茨城県鹿嶋市で2011年スタート。ミツバチの飼育を通して自分たちの周辺の自然環境を見つめ直すきっかけを作り、ミツバチの住みよい環境、すなわち花の沢山咲く環境作りを目指して、蜜源植物植を増殖するなどの環境保全活動を目指しています。

発足の経緯に関して教えていただけますか?

2003年頃、鹿嶋市で行政と市民との協働のまちづくり活動が始まりました。その活動の委員に応募し、環境分科会に委員として参加することになりました。市民と行政と一緒に議論や調査を進め、3年後にかしま環境ネットワークを立ち上げ、事務局長をすることになりましたが、当時はサラリーマンの身でもあり、自ら環境活動に汗を流すことは出来ずにいました。

しかし2009年の夏、新聞に掲載された銀座ミツバチプロジェクトの「国内のはちみつ生産量の0.03%のはちみつが収穫できた」「屋上緑化が進んだ」「蜂蜜で地域の商品開発が進んだ」という記事に感銘を受け、自分でもミツバチプロジェクト活動をしたいと思うようになり、2010年定年を機に、銀座ミツバチプロジェクト主催の養蜂講座、長野県はちみつ蔵の養蜂講座に参加し、書籍等でもミツバチについて勉強した後、2011年2月に12名の仲間と共にかしまミツバチプロジェクトをスタートさせ、かしま環境ネットワークの活動から独立することになりました。

その活動の目的は「ミツバチで環境活動」「蜂蜜で町おこし活動」としました。

商品開発はどのようにしていますか?

商品開発は、全てお店にお任せしています。

パステリアゴッツオさん(鹿嶋市)ではハチミツごちそうプリン、チャチャブーさん(神栖市)ではシフォンケーキにそれぞれ私たちの蜂蜜を使っていただいています。また、私たちの作った商品はみつろうハンドクリーム、はちみつローション(医薬品のためワークショップ対応のみ)、ハチミツ石鹸、みつろうワックス、みつろうキャンドルです。私たちの製品の中での一番人気は、みつろうハンドクリームです。こちらは医薬品の範疇に入るため製造許可や販売許可が必要であることから、ワークショップで作り方を伝えながら蜂蜜や蜜蝋等の材料を販売しています。2020年はコロナ禍でワークショップができず収益が減ることが予想されたため、みつろうハンドクリームを手作りキットとして販売しました。観光客や地元の人向けに鹿島神宮の門前にある手作り品を扱う鹿嶋人ギャラリーさんで販売しています。

最近では「誤って口に入っても大丈夫」なみつろうクレヨンを開発して子供たちと一緒にワークショップをする構想を持っており、微粉砕した野菜くず等天然素材を顔料にして作れないか考えています。また、少し話が逸れますが全国の都市養蜂の皆さまとも繋がりたいとも思っています。地域の活性化にも繋がるし、その繋がりの中でやってみたいこと、新しい商品開発等が実現できるようになったら面白いと思っています。

かしまミツバチプロジェクト活動の様子

ミツバチの活動は地域で認知されていますか?

鹿嶋市では、みつばちプロジェクトへの認知度が高まってきています。

市内のミニ博物館ココシカや各公民館などのご協力を得て子どもミツバチ教室や蜂場見学を継続的に実施していますが、コロナ禍で若干停滞気味ではあります。また、5月にはコスモス種子、9月にはナタネ種子を市内各所で無料配布することも続けていますので、知名度はそこそこあると思われます。

プロジェクトのはちみつは主に3か所のお店で販売していただき、市民センターのお祭りの際には模擬店を出して販売しており、多くの方が楽しみにして下さっているようです。また、私も個人でミツバチを飼育してハチミツを販売しています。有難いことによく利用してくださるお客様もいて、FMかしまさんは開局10周年記念で視聴者プレゼントに選んでいただきました。商工会議所さんは、地域の商品を掘り起こして拡販しようという活動をされており、その地域物産のパンフレットにハチミツを入れて頂きました。またJAの直売所等数カ所で販売してもらっています。地域の方々の協力もあり、ミツバチも蜂蜜も、かしまミツバチプロジェクトも認知度が高まってきています。

かしまミツバチプロジェクト活動の様子

今のメンバーの構成や発足してからの状況などを教えていただけますか?

現在は15〜16名で活動しています。今参加しているメンバーは新住民が中心です。私は神戸から就職で鹿嶋に移り住んで45年と長いですが、あくまで新住民です。鹿嶋というまちは、昭和40年頃から鹿島コンビナートができ、外から多くの人が移り住むまちになっていきました。また、別荘地としても利用されていることなどからリタイア後に移り住む方々も多くおられます。

発足当初のメンバーは私たち夫婦以外にはもうおらず、一番長い人で発足して1年後くらいから活動に加わった方がお一人おられるだけで、ほとんどがこの3、4年以内に加わった方々です。活動日は、毎週土曜日の午前中です。発足当初は、茨城大学鹿嶋研究センターの客員研究員の仲間がメンバーに多数いたので環境やまちづくりへの意識も高かったのですが、最近はメンバーが高齢化し、まちづくりや環境活動は少しトーンダウンしているように思います。でもシニア中心の楽しいコミュニティです。作業し終わってからは、皆でお茶を飲みながらミツバチの話をしたりします。それが非常に居心地良くてとても楽しいです。

鹿嶋市は海もあり湖もあり、台地部分は洪水などもない。さらに、黒潮が流れているので温暖な地域でおそらく、歴史的にも古くから豊かな土地であったのではないかと思います。そのような風土なので、地元の人は比較的のんびりしているような気がします。そのため、鹿嶋市で新しい活動をしている人達はほとんどが新住民であり、元々の地元の人達はあまりそれらには参加してこない傾向にありました。しかし、ミツバチに対する認知度を高めるためにも元々の地域の方々ともっと繋がりを深くできないかと思っています。地域の公民館との連携はそのためにも必要なことだと考えています。

シニアのコミュニティにとってミツバチはどのような位置づけですか?ミツバチは大切な存在ですか?

かしまミツバチプロジェクト活動の様子

大切な存在ですね。やっぱり可愛いです。その可愛さ、健気さ、そしてその生態の不思議さを理解してもらえるように意識的に私が皆さんの興味を惹きつけようとしているところもあります。

例えば、「今週は女王蜂が見つからないね」とか「卵がどうのこうの」など。先日は、10月中旬なのにも関わらず2匹も女王バチがいました。10月に新しい女王バチが誕生するなんて驚きだが、そのようなことが起こった時に「どうしてなのか?」「決闘もせずにどうして仲良くいるんだろうね」「来週も2匹仲良く卵産んでいるかな?」というように、考えるようにして、みんなの興味をかきたてています。

ミツバチは赤ちゃんが色々と調子が悪くなるのと一緒で、色々なトラブルが起こります。まるで、赤ちゃんが泣いたら「どうして?」と原因を想像するような感じで、みんなで考えるのが楽しいと感じています。最近は、巣箱の担当を決めて、担当同時でお互いの育て方を共有し合ったり、競争しあったり工夫してミツバチのお世話をしています。このようにみんなでお世話し、慈しみ、ミツバチはシニアにとっては大切なコミュニティの中心になっているのではないかと思っています。

プロジェクトの特徴は何ですか?

メンバーから入会金や会費等のお金を集めない(但し、入会時のミツバチ勉強会受講料3000円は徴収)、活動に参加したらポイントをつける(Beeポイント)、そして翌年採れたハチミツを、前年に溜まったBeeポイントに応じてメンバーに山分けするという感じで活動しており、参加する人達は楽しいし、インセンティブになっているのが特徴だと思います。養蜂に必要な経費は蜂蜜の販売やワークショップ料金などから捻出しています。

また運営上の特徴として、組織をつくらないようにしています。さらに会則をつくらないことで、ガイドラインがありません。それは、役割を決めるとそれ以外の役割を分担しなくなる可能性があること、また会則を作るとその会則から外れた活動ができなく(しなく)なることなどの弊害を無くすためです。メンバーみんながそれぞれ出来ることをやって活動に協力し、メンバーの賛同があればいくらでも活動の幅が広げられるようにしています。但しその分、事務局長の役割を担っている私は何でもやらなければならず仕事量は多くて大変です。

また、環境活動として種子の無料配布の他、自分達でも蜜源植物を植えようとビーガーデンを作っています。その規模はシニア化が進むにつれ縮小してきていますが、蜂場の側にいつも蜜源植物が植わっているようにしています。

初心者に伝えたい醍醐味は何ですか?

地域で知り合いが増えたり、リタイア後が楽しいと感じられたり、いっぱい花があり、花には蜜があり、あとはミツバチがいれば、それが有価物に代わります。そんな風に自然にあるものが、有価物に変わるというのは面白いですよね。地域の資源がミツバチを飼うことで活用できるのは面白いなと私は思っています。生み出していきたいと思います。

かしまミツバチプロジェクト活動の様子